理事のリレーメッセージ
理事10名が個人の経験や考えについて、毎月交代でメッセージをお送りします。
平成29年度(2017年4月~2018年3月)
2018年3月 理事のリレーメッセージ
カーリングから学ぶもの
数々の感動と記録を残してオリンピック冬季大会が閉幕し、舞台はパラリンピック冬季大会に移ろうとしています。オリンピック冬季大会では、日本選手のチームワークや選手間の連携の素晴らしさが外国においても大きな話題になりました。オリンピックだけでなく、これまでの様々な競技会でも日本の選手の特性は特に団体種目に表れてきたように思います。相互に忖度し合うことを尊重する国民性に由来するところかもしれません。
団体種目といえば、今回興味深く見入ってしまった種目に日本の女子チームの活躍も光ったカーリングがありました。雪上や氷上での滑走種目がほとんどの冬季オリンピック種目の中で、ストーンと呼ばれる取っ手がついた石を投げる(滑らせる)選手とそのストーンの進路を調整しながら目標地点まで導く選手の協力が勝敗につながるというユニークなチーム種目です。
氷上のチェスと言われるそうですが、相手と布陣を争う点はチェスや将棋のようなゲームとしての面を持ちながら、チェスや将棋のように対局者が自ら駒の配置を決めるのではなく、駒(ストーン)の布陣を考えながら、一つひとつの駒(ストーン)にチーム全員の役割を結集して最適な結果を得ようとするところに、このスポーツのチームプレーとしての奥深さと精神性が感じられます。
組織的に物事を進めるうえで欠くことができないメンバーシップの重要性を教えられるスポーツです。
冬のスポーツの祭典が終わると、間もなく新年度が始まります。事業運営に当たっては、また様々な課題への対応が求められることと思いますが、私たちもメンバーシップを大切に事業目的に向かって日々の業務に取り組んでいきたいと思っています。
副理事長 平野 耕市
2018年2月 理事のリレーメッセージ
地域共生社会の実現は、福祉の市場原理化が狙いか?
社会保障財政が破綻に瀕している今、国は本来国でやるべきことを民間に肩代わりさせようとしています。平成26年に成立した社会保障改革推進法では、社会保障を「自助努力(自己責任)を基本」とする方向に大きく舵を切り、平成28年の骨太の方針では、支え手と受け手に分かれずに支え合う「地域共生社会の実現」を打ち出しています。
気をつけねばならないことは、同時に出された経済財政再生計画には「公的サービスの産業化」が謳われていることです。これはサービスの市場化と規制緩和を指しており、社会福祉の世界にますます市場原理が入り込んできます。
日本には憲法に保障された公的福祉の提供の長い歴史があり、その大部分を現実に担ってきたのは社会福祉法人であります。市場原理と規制緩和を安易に福祉の世界に入れるとこの日本特有の福祉の良さを失うことになると認識しなければなりません。
この大きな流れを変えることは至難のことでしょうが、今後留意しなければならないことは、日本的福祉の良さである公的な関与の道を閉ざさないことです。行政とのタイアップにより、福祉を必要とする人たちにとって、より良い福祉の提供の道を探ることです。たとえば、指定管理者制度におけるお金の使途について都との交渉を徹底的におこなう、区市での地域ネットワークでの活動の場には、行政を会議の場に引っ張り出し、かならず行政機関にある役割を担ってもらう、広域連携の「はたらくサポートとうきょう」では都からの援助をできるだけ引き出すなどです。
これからが日本の福祉を守る正念場です。社会福祉法人同士お互い横に連携をとり、少しでも日本の福祉の良さである公的福祉を維持するようがんばろうではありませんか。
理事 相羽 孝昭
(社会福祉法人 アゼリヤ会 理事長)
2018年1月 理事のリレーメッセージ
教育と日本の将来
今の日本人の姿をみると日本の将来が不安です。自己中心的であり、政党でも自党中心的。我慢ができず自己責任感が乏しいのです。
私の小学生時代、鉛筆は小刀で削り、何回か指を切って慣れてきました。鉄棒から落ちて骨折した子もいましたが、学校側に文句を言う親はいません。全て自己責任でした。
今は、仕事でストレスを感じ、精神的負担が増え、うつ傾向が出る人は少なくありません。それにより離職を繰り返す人も多数おります。これは個人、社会、国にとっても大きな損害です。
敗戦後、餓死する人が多かった時代に、日本は奇跡的復興を成し遂げました。こういう力を持つ民族です。我慢、強さを持った人を家庭教育でも学校教育でも社会教育でも育てましょう。
理事 内野 滋雄
(社会福祉法人三徳会 理事長)
2017年12月 理事のリレーメッセージ
プラハの人生階段
片付けをしていたら、本の山の間から面白い物が出てきた。
ずいぶん以前にチェコに行った時、プラハの屋台で買ったイラスト画で、中世風の絵柄が彩色され描かれている。本物だったらさぞや高価だろうけど、厚紙にコピーされた土産品で、それでも懐かしく座り込んでしばし見入ってしまった。
中央下に楽園のアダムとイブが居て、その周囲が石段になっており、左から10年きざみで上に上がり、また右に下がってゆく。この石段が人間の人生の階段になっていて、最初は揺り籠の赤ん坊、10代では元気に遊ぶ子どもの姿。20代では男女が抱き合い(恋愛したり結婚したり)、30代では狩猟姿の父親と赤ん坊を抱いた若き母親(家庭を築く)、40代は何か書類を手に持ち紳士風(仕事に専念)、50代が石段の最上段で両手を開いて、さあどうだという顔をしている(人生の頂点か)。
なんとも考えさせられるのは、右下下がりのこれからで、60代では背筋は伸びているがステッキが登場し、70代はパイプを咥えて一見余裕ありげだが、足下がかなり覚束ない。80代では髪が真っ白で腰が曲がり始め、90代ではすっかり腰が曲がって杖にすがる。100歳代ではアダムとイブの方を向き、深く椅子に座って敬虔に祈る姿が描かれている。
このイラスト画、きっと昔のヨーロッパでは各家庭に一枚貼ってあったのではないか。人間の一生が、一目瞭然に理解できる絵なのだ。
・・・人間は楽園に生まれ、そして再び楽園に帰る。
理事 鈴木 龍一郎
(写真家・日本写真家協会会員)
2017年11月 理事のリレーメッセージ
嘘をつかない誠実
最近のニュースから、日産自動車(無資格職員による完成検査)と神戸製鋼(データ改竄)に注目しました。
クルマの完成検査は、保安基準に適合しているかを確かめる「車検の1回目」に当たるもの。検査書類に検査をしていない有資格者の氏名と押印がなされていたといいます。会社は、検査は確実に実施され、あくまでも「手続きに」問題があったと釈明(何処かでよく聞く弁解)。ことは安全性に関わることなので、ことの本質を分析し、誠実に対策を開示してもらいたいものです。
アルミ製品などの性能データ改竄は、自動車、航空機、新幹線など広範な産業に影響を与え、広範な安全性に対する脅威である故に、神戸製鋼の倒産の危惧さえ一部に囁かれているようです。
マスコミが、視聴率の故か、クールジャパン的な番組で外国人に日本を称賛させる番組にうつつを抜かしているうちに、競争の激しさに負けてコストカットの脅迫を前にして、1970年代に注目されたジャパン・アズ・ナンバーワンは色褪せてしまうのでしょうか。しかし、日本人の倫理観は世界トップクラスであることを思うと、企業も嘘をつかない誠実さに回帰し、雇用を守るためにも企業倫理を維持してほしいものです。
理事 板垣 光繁
(江東総合法律事務所弁護士)
2017年10月 理事のリレーメッセージ
「新しい社会的養育ビジョン」をめぐって
今年8月、国の「社会的養育のあり方」検討会がまとめた『新しい社会的養育ビジョン』が、児童福祉事業の分野で、大きな話題になっている。
これまでの児童養護施設や乳児院への入所を、原則止めにし、「親と子」の愛情関係の中の養育、主に里親の元での養育を強く推し進めていくことを示している。里親などの引き受け手があれば、望ましい社会的養育には違いない。しかし、わが国の場合、戦後から一貫して、考え方として里親の養育制度が強力に取り組まれてきたが、昭和26年当時から今日まで、約60年間経過しても、里親数1万人、委託児童1万人弱で、推移してきている。この現実を踏まえての新たなビジョンなのか、現実的な可能性を掘り下げたビジョンであることを願うばかりである。
副理事長 小笠原 祐次
2017年9月 理事のリレーメッセージ
敬老の9月に思うこと
今年も敬老の9月を迎えます。かつて8月は高齢者にとっては鎮魂と祈りの月。夏休み、納涼祭の一方で悲しみの8月を過ごしておられる方々の想いを共有しましょう、と朝礼でよびかけていたことを思い出します。
戦争や被爆を体験された方々が80歳90歳100歳になられ、稀少、貴重な存在である現在、その年代の皆様と接する職員は語り継ぐ役割を果たす立場かも知れません。時を惜しみ、大先輩の方々の体験を伺い、記録したいとあらためて思います。
その大先輩となるおひとりでもある当法人の坂本巌名誉理事長が8月に100歳のお誕生日を迎えられました。今も施設を利用される子どもたち、お母さん方、高齢者の皆様の生活を案じ、平穏であらんことを毎日願って下さいます。そしてご利用者を支える職員にその願いを託し、労いのメッセージを発信して下さいます。
100歳の日々を重ねられることの深さや高さを思います。
介護を必要とされるご高齢の方々も発信する力は弱くなっておられても、同じように積み重ねられた沢山の日々がその方の人生を形成されておられます。
子どもたちが平和で穏やかにその人生を70、80、90歳と積み重ねていかれますように。
そして多くの日々を重ねた高齢者の貴重なこれからの毎日が平穏でありますように。
理事長 鈴木 恂子
2017年8月 理事のリレーメッセージ
I want to tell you
当たり前のことですが、生きていく中では
多くのヒトとの出会いがあり、さまざまな触れ合いがあります。
よい人間関係をつくるのは、意外に難しいことです。
自分のことは当然理解し、正しいと思っていても
相手がどう感じているか、推し量ることは容易ではありません。
人間関係を良くしていくには、心地良い言葉をたくさん使うべきだ
と学んだことがあります。
それは、ヒトを思いやる言葉や、感謝の言葉、意欲的な言葉です。
「ありがとう」「うれしい」「素晴らしい」「がんばろう」「素敵」
心地よい言葉を使うことで、
自分を積極的にし、よりポジティブになり、まわりの人をも気持ちよくさせてくれます。
ヒトへの思いの伝達は、言葉だけではありません。
サッカーならチームメイトからのパスを受けて、ゴールを決めたとき
言葉なくしても通じあえたと感じることでしょう。
しかし、大事なのは、パスを受け取れなかったとき
自分にパスを出してくれた相手にどう振舞うかです。
「せっかくいいパスをだしてくれたのに 決められなくてごめんね……」
「もうすこしでゴールだった……また次もたのむね」
すぐそばにいれば、言葉で発することができるでしょうが、遠く離れた味方には
拍手などの手振りやアイコンタクトで表現します。
「求めたことに対し、応えてくれるヒトへの感謝」「求められたことができなかった時
次への期待」
うまくいった時より、失敗したときのコミュニケーションが大切なのではないでしょうか。
誤解を恐れず、挨拶をはじめ、会話、アイコンタクトほか、さまざまなコミュニケーションを
くり返していくことで、ほんの少しでもヒトをわかろうとする気持ちを持ちたいと思います。
業務執行理事 坂本 卓穂
(府中市立あさひ苑施設長)
2017年7月 理事のリレーメッセージ
初夏から始まる法人事業に向けて
春から初夏へと木々の緑や花木の様子も変化し、私たちの目を楽しませてくれる。我が家の入り口に、いつの間にか一本の見かけない樹木が育ち、秋にはちいさな実をつける。実をつけるからには花もあり?。五月中頃、初めて枝先に薄紫色の小さな花をたくさんつけていたのに気が付いた。近所の人もそのかすかな香りとともに可憐な花に魅入り、樹木の名前を私に訊ねる。
かつての職場の敷地内に同じ木が一本だけあるのを思い出した。「センダン」という樹名の香木で宮崎県の飫肥城址にもあったと教えられた。
「栴檀 双葉より芳し」と詠まれ、関西以西の暖地に分布しているとのことである。 8世紀初頭の頃、「妹が見し、゛あふち゛の花は散りぬべし、我が泣く涙 いまだ干なくに」(山上憶良)のように後世の時代にも悲哀を込めた歌として詠まれている。また、平家物語、平の宗盛父子の「獄門の木」という忌まわしい呼び名もあるという(「あふち」とは栴檀のこと)。
「良薬 口に苦し」、センダン科植物にはセンダンやニームが属し、ニームの葉は茶葉として活用されてはいるが、センダンは利用方法によって混同すると大変危険なことと言われている。葉を煎じて飲むこと、ひびやしもやけなどへの薬効も期待できるものの、いずれも専門的な知識と経験によってはじめて安全なものとなる。
新年度がスタートして早くも季節は春から夏に移る。福祉の専門職として、また新たな制度の下で、利用者やその家族からいただく情報や知恵を大切に職員は共有し、事業に活かす取り組みに専念したいものです。
業務執行理事 佐藤 昌美
2017年6月 理事のリレーメッセージ
雨は嫌いだが…
今年も雨の季節です。
雨が好きな人は多くはないと思いますが、40年以上も自転車通勤をしてきた私にとっては、どんな雨も、とても好きにはなれませんでした。雨カッパの中の蒸し暑く、ベタベタな感覚は忘れようがありません。
とは言っても、この時期は、できるだけ雨が降らないでほしいと願いつつ、夏に向かって水不足が気になる時期でもあります。事実、今年は梅雨を前にして早くも水不足の予測が叫ばれています。自然現象と分かっていても、豪雨被害を起こさず、その後の渇水の心配がない梅雨にならないかと、毎年都合の良い結果を期待するのです。
治水と利水の関係のように、私たちの身の回りは、二律背反する事案が実に多いと感じます。
国の段階での議論を見ても、原発の再稼動問題、沖縄の普天間基地の移設問題、憲法改正問題など、白か黒かという相容れない平行線が続いています。東京においても、築地市場の老朽化に伴い、新たな市場を豊洲にするか築地にするか、新市場の設置場所の選定とその過程で生じる補償費の累積との間で焦燥感が充満しています。目の前の白か黒かを議論するだけでなく、もう少し場所や時間の条件を加味した柔軟な実施計画や具体的な実施アプローチへ見直す中で、中間色へと導くことができないものかと、つくづく考えさせられます。
今年度から、法人運営に関わらせていただく機会をいただきましたが、法人運営も利用者のサービス向上と事業の健全運営という二律背反の中で、日々の業務が進められています。
継続性のある法人経営を目指して、バランスのある判断が求められていることを心にしっかり留めて役割を果たしていきたいと思います。
業務執行理事 平野 耕市
2017年5月 理事のリレーメッセージ
丁寧な説明
強力な現政権は、圧倒的な議席数をもって、「丁寧な説明」を尽くして審議を行うと言いながら、国民が十分に納得する前に、次々と法案、制度変更を進めている。
「森友問題」の中心課題である、国会で正式に不適当と確認された「教育勅語」を、幼稚園児に暗唱させる学校法人が、なぜ格安の価格で学校建設敷地を確保できたのか、なぜ国の機関が率先して自治体にまで出向き、学校認可の進捗状態を再三にわたって確認したのか、国民には「丁寧な説明」もなく、謎のまま、森友学園が学校認可を取り下げたことを理由に幕が下ろされてしまった状態になっている。
一昨年からの利用者負担(部屋代負担)によって、約2千人に上る利用者が特養利用を止めたという国の調査が発表された時期に、来年度から、また新たな利用者負担が強いられる「介護保険制度」改革法案が、「丁寧な説明」も、十分な委員会審議もないまま、委員会で与党のみの挙手で、一方的に決められてしまった。
政治の世界の「丁寧な説明」とは、うやむやな状態で、多数によって一方的に進めることを言うのだろうか。「道徳」が、教科として進められることになったが、国会議員「先生」にこそ、「道徳」教育が必要なのではないか。
副理事長 小笠原 祐次
2017年4月 理事のリレーメッセージ
2017(平成29)年度が始まります
今年度の始まりとなる4月1日は週末になりました。多くの企業は4月3日(月)が実質的な年度初日となり、新入社員等を迎えることになりますが、当法人は年末年始祝祭日休日関係なく365日をローテションで勤務体制を組んでいます。
ご利用者の毎日の生活や地域の相談を受け緊急対応するという24時間365日は交替で勤務する職員に支えられています。4月1日に各施設を回って辞令を伝達しました。
今年度は二つの点で大きなエポックとなります。
まずは新たな役員体制になること、そして二つ目は法人創立71年目のスタートの年になることです。
1.新たな役員体制になること
社会福祉法の一部改正に基づく定款変更により法人の組織体制が大きく変化しました。
特に長年続いた常務理事(1名)が4名の業務執行理事となり、業務分担(管理・高齢・母子・法令遵守)し担当することになったことです。
法人の経営にかかわる日常業務を複数の理事で分担することは、より客観的、より重層的な業務執行が期待されます。
2.法人創立71年目のスタートの年になること
昨年度、創立70周年の記念事業として三か所の地域でシンポジウムや感謝のつどいを開催しました。改めて地域の多くの皆様に支えられていること、地域のなかで私たちが果たすべき役割を実感し、再認識した年でした。その意味でも今年度は「職員の年」として、職員の力を強化する、業務内容を見直し働きやすい職場をつくる、働き方を考える等々、職員に係る多くの課題をひとつひとつ見直して、10年20年働き続けることができる新たな基盤づくりに向けて71年目をスタートさせたいと考えています。
これからも多くの皆様のお力添えをいただき、社会福祉法人としての原点を忘れずに児童福祉、高齢者福祉、地域福祉の一端を担って努力してまいります。
今年度も変わらぬご支援ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
理事長 鈴木 恂子